中島久恵著の教則本
私は、中島先生にメールを出したことがあります。 先生の教則本が、当サイトでとても好評なことや、私の感想などいろいろ書いて。 まあ、いわゆるファンレターみたいなもんです。
ところが、すぐに先生からの返信が届きました。 どうやら、先生も以前から当サイトのことをご存知だったようでした。 しかも、私と一度お話しがしたかったなどなど。 こんなド素人の私にですよ~感激しましたよ~
余談はさておき、 なぜ中島先生の教則本がオススメなのかについてお話ししたいと思います。
これまでの教則本というのは、アレもコレも的な内容のものが多かったように思えます。 確かに、ジャズを弾くときには覚えた方が良いようなことばかりです。 しかし初心者は、そのあまりの情報量の多さがあだになって、何から手をつけたら良いのか分からなくなってしまうのです。
それに対して、中島先生の教則本は、とにかく「コレだけ」というところが凄いのです。 しかも、それは従来からある「ジャズを弾いた気にさせるコレだけ」のような生半可なものではありません。 本気モードの「本格的かつ実戦的なジャズを弾くためのコレだけ」です。
なかでも、私は「モダン・ジャズ・ピアノ・レッスン」が超オススメです。
この本を最初に手にした時の衝撃を、今でも覚えています。 ジャズピアノの練習を始めてから、既にかなりの年月が経っていました。 分かりづらい教則本や理論書の山を築いたり、頭を抱えてうずくまったり、あきらめてお酒を飲んだり、何ヶ月も全く弾かなかったり、見当違いの過酷で無謀な練習を繰り返していました。 まあ、誰だってそれだけのことをすれば、多少の理論も分かり、試行錯誤で独自の練習方法だってできるようになるというものです。
そんなある日、楽器店の教則本コーナーで、この本に出会ったのです。 超凡人である私が費やしてきた何十年かの徒労が、この本の中にありました。 そのとき、私は今までの練習が正解だったことを始めて確信することができたのです。
そのようなわけで、私はこの教則本を使って練習してきたわけではありません。 しかし、この教則本がもたらす絶大な効果だけは、誰よりも実感できるつもりでいます。
もしも、ジャズピアノを始めたばかりの私が手にしていたなら、ナベサダ様のジャズスタディを読み頭を抱えることも、100冊近い教則本の山を築くこともなかったかもしれません。 お酒を飲んだり、修業まがいの無謀な練習はしていたかもしれませんが、とにかく私の人生は大きく変わっていたことでしょう。
ところがです。 絶版となってしまったのです。 本当に信じられないことです。
と、思っていたら、やはりというか、当然というか。 復刻版がでました。
その本の名は「ジャジーランドのジャズ理論講座」です。
タイトルが変わっても、内容はまったく同じです。 出版社も、ドレミ音譜出版社からジャジーランド音楽出版社に変わりました。 しかし、それだけではありません。 イラストを中島先生が描かれていたり、章の内容が分かりやすくなったり、巻末に索引が付いて用語の検索ができるようになったりで、よりいっそう使いやすくなりました。
私は、こんな素晴らしい教則本を、いとも簡単に入手できるジャズピアノを始めたばかりの方達が羨ましくて仕方ありません。 でも、私の人生だってそれほど悪くはないので、せいぜい皆様、ジャズピアノが上手になってくださいまし。
- ジャジーランドのジャズ理論講座 上巻
- 中島久恵 /ジャジーランド音楽出版社
- ジャジーランドのジャズ理論講座 下巻
- 中島久恵 /ジャジーランド音楽出版社
- ジャズピアノ基礎練習ドリル導入編
- 中島久恵 /ジャジーランド音楽出版社
以前、ここで紹介していた中島先生の次の3冊も残念ながら絶版になってしまいました。
- 本物のジャズフィーリングを学ぼう 憧れのジャズピアニスト CD付
- ジャズピアノテクニカルメソッド ジャズの練習 ビギナー編
- ジャズピアノテクニカルメソッド ジャズの練習
例えば「鍵盤のドの位置さえ分からないよぉ~」って方でも大丈夫です。 楽譜の読み方や、ピアノの弾き方の基礎から学べます。 そして、ちゃんと本格的なジャズピアノへと導いていただけるようになっています。
この本の特設サイトには、練習音源、解説動画、さらに中島先生の模範演奏の動画などもあり、まさに至れり尽くせりといったところです。
ピアノは弾けるけどジャズの始め方が分からない方、挫折して諦めかけている方、ジャズピアノへの扉はここにあります。
さて、御本もご紹介できたので、勝手ながら余談に戻らせていただきます。
もう何十年も前になります。
今は無き、そのジャズのライブハウスは、ゆるやかな坂道の中ほどにありました。 近くのアパートに住んでいた私は、よく仕事帰りに寄ったものでした。
超有名な方が出演されるときでもない限り、店内は空いていたので、その雰囲気もたまらなく好きでした。 私はいつも、右側にあるカウンターの隅に座り、水割りを飲みながら、奥のステージに羨望の眼差しを向けていました。 そのときどきで、ピアノトリオだったり、ギターやサックスが入った編成のときもありました。 演奏が始まると、その場の空気は一瞬で変わります。 その異空間で行われるソロの緊迫感は、それほどジャズのことを知らない私でもよく分かりました。
今でも、ときどきそこで演奏していた若い女性のジャズピアニストをなぜかおぼろげに思い出します。 演奏が終わった後、ステージ寄りのテーブルで何かを飲みながら、共演者の方達と談笑されていたのを覚えています。
これは、後から知ったことなのですが、中島先生もそのライブハウスで演奏されていたことがあったそうです。
そのジャズピアニストが、中島先生だったのかは、いまさら確かめようもありません。 ただ、先生と私は、同い年なので、なんとなくそんな気がするのです。 そして、その先生の著書をご紹介できるのも何かの縁なのかもしれません。
その頃の私は、ピアノを始めてはいたのですが、ジャズピアノの入口が分からず、ほんとうにどうしようもない状況でした。 今と違って、携帯電話はおろか、インターネットさえ一般的に普及していない時代です。 やっと見つけたジャズピアノの教則本でさえ、初心者には不親切極まりないものばかりでした。
あの時、少しだけ勇気を出して教えを乞うことができたら、せめて一言だけでも声を掛けることができたら、才能の無い私でも三流のアマチュアジャズピアニストくらいにはなれたのかもしれません。
人生が変わるきっかけなんて、いたるところに転がっているものです。 それは、一冊の本だったり、ほんの短い言葉かもしれません。
などと、四流のアマチュアジャズピアニスト見習いモドキの私は、上手にまとめた気になったり、たいしたことのない過去に思いを馳せたりするのでした。