15.裏コードって何の裏なの?
ジャズの場合、「 C7 」をこのまま弾かないってのは当たり前のことです。 なんといってもイチバンの見せ場であるドミナントセブンなんですからね。 だったら、かっこよくテンションコードでキメなくちゃいけません。
最低でも「 9th 」(ナインス)と「 13th 」(サーティンス)のテンションノートくらいは加えたいところです。 ということで、「 C7(9,13) 」なんてのが、すぐに押さえられないことには、もうどうしようもありません。
私のようにかなり過激な方法(練習ノート>ジャズピアノ濃縮編)でもいいし、もっと穏やかな方法でも何でもいいんです。 「 C ~ G 」までの、12コの「 7(9,13) 」が、クローズボイシングで、2つの転回形で押さえられればそれでOKです。 とにかく、覚えちゃったもん勝ちです。
まず、「 Dm7 → G7 → C 」を弾いてみましょう。
軽~く、「 Dm7(9) → G7(9,13) → Cmaj7(9) 」のように押さえてみましょうか。
「 Cmaj7(9) 」は、気分次第で「 C6(9) 」にしたって構いません。
では、「 G7 」をさらに過激なテンションコード「 G7(♯9,♭13) 」で押さえてみましょう~なんて言ったら。 「ええ~、そんなのまだ覚えてないよ~」とか「さらに、覚えなくちゃいけないの~」って、なっちゃうでしょうか?
でも、心配はご無用です。 そう今回は、「 ♯9th と ♭13th 」を覚えずに弾いちゃう裏ワザ?です。
実は、「裏ワザ」なんて呼ぶほど大袈裟なもんじゃありません。 みんなごく普通に使ってる方法なんですから。
ただ、「 D♭7(9,13) 」を押さえるだけなんですけどね。 これなら、すでに覚えているので、すぐにでも押さえることができるはずです。
「 Dm7(9) → D♭7(9,13) → Cmaj7(9) 」 ってやれば、
「 Dm7(9) → G7(♯9,♭13) → Cmaj7(9) 」 ってやったのと同じだってことです。
では、その種明かしを~と言っても、前回の内容でネタの半分くらいはバレています。 たしか「ドミナントセブンの3度と♭7度の間は増4度、♭7度と3度の間も増4度」ってことでしたよね。 ちょうどオクターブを2つに分けるトライトーン。
ということは、3度と♭7度を取替えるとどうなるのか?ってことです。
- 「 G7 の 3rd 」 = 「 D♭7 の ♭7th 」
- 「 G7 の ♭7th 」 = 「 D♭7 の 3rd 」
これだけでも、「 G7 = D♭7 」ってなりませんか?
多分まだ、「???」って感じですよね。 「ルートと5度はいいの?無視すんの?」ってなってると思います。
でも、ドミナントセブンであることの理由ってのが、この3度と♭7度の存在だってことです。 だからって、ルートと5度はどうでも良いってことではないのですが、とりあえず忘れておいてください。
そこで、テンションノートはどうなるのか?
- 「 G7 の ♯9th 」 = 「 D♭7 の 13th 」
- 「 G7 の ♭13th 」 = 「 D♭7 の 9th 」
さて、クローズボイシングで押さえるための4声が出揃ったのでまとめてみましょう。
「 G7(♯9,♭13) = D♭7(9,13) 」
逆に、「 G7(9,13) = D♭7(♯9,♭13) 」ってことにもなっています。
他のコードでも同じです。
C7 と G♭7 、 F7 と B7 、 B♭7 と E7 、 E♭7 と A7 、 A♭7 と D7 、 D♭7 と G7。
いつのまにか5度圏の反対側どうしで、こんなラブラブな関係が出来上がってるなんて~超遠距離恋愛みたいですぅ~
瞬間的に関係がある2つのコードのペアが分かるのは、5度圏を覚えていたおかげかもしれません。
そして、さきほど放置していたルートと5度ですが~ 5度ってのは、安定感をもたらす音なんですね~だから不安定感が大好きなドミナントとしては、それほど重要じゃないのでしょう。
そして、ルートですが、「 Dm7(9) → D♭7(9,13) → Cmaj7(9) 」のようにしてしまっても全く構わないのです。 ソロでピアノを弾く場合、実際にベースとして「 D♭7 」を弾いちゃってもいいってことです。
この場合、「 G7 」の「裏コード」である「 D♭7 」を使うことによって、ベースが半音で降下していくというカッコいいパターンを作ることが出来るんです。 右手でコード、左手でルートを弾いてみればその効果が充分に分かると思います。
つまり、ルートによって、コードネームが「 G7 」か「 D♭7 」になるというだけのことなんです。 それに、「 D♭7 」にとっての「 G 」ソの音(「 G7 」にとっての「 D♭ 」レ♭の音)は、テンションノートの♯11th ですからね。 ということは、ルートもそれほど邪魔にはならないってことなのでしょう。
私がこの「裏コード」のことを知ったのは、どのくらい前になるのか忘れるくらいの昔です。 多分、ジャズだかキーボードだかの月刊誌の連載だったようにも思います。 私は、こういった月刊誌は買わないので、きっと立ち読みだったのでしょう。 そのとき、ものすご~い衝撃というか、「そ、そ、そうだったのか~」って驚いたことを覚えています。 今では、どの教則本にも載っているようなことなんですけどね。